質の良い睡眠をとるには、難しいことではありませんが、意外にたくさんの条件を整える必要があります。
その1つが脳内でさまざまなスイッチ役を果たす神経伝達物質をきちんと分泌させること。
セロトニンという脳内物質は、睡眠のカギを握るとともに、私たちの幸せな感情にも影響を与える原因となっているのです。
では、セロトニンがきちんと分泌されずに不足すると、どんな症状の原因になるのでしょうか?
セロトニンは幸せの元?
ストレス社会と言われる現代、不眠や精神病に悩まされる人が増えていると言われてます。
実は、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、そんな状況とも関係しています。
単純にいうと、過剰なストレスを解消するために幸せな感情の元になるセロトニンがどんどん消費されて不足したことが原因になって、気持ちが徐々にふさぎ込んでしまうのです。
セロトニンはどんな物質?
脳内には、約1000億個の神経細胞があります。
これらの神経細胞が情報をやり取りしながら私たちの生命活動を支えています。
この情報のやり取りに必要なのが神経伝達物質。
その1つがセロトニンで、精神を安定させ、気持ちをリラックスさせる働きがあります。
交感神経に影響されるセロトニンの働き
セロトニンは、自律神経のなかでも交感神経の働きに影響を及ぼす神経伝達物質です。
昼間の活動する時間帯を支えます。
過剰なストレスがセロトニン不足の原因に
セロトニンは神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンとともに働きます。
ノルアドレナリンは、集中や積極性をもたらすと同時に、緊張や不安などもコントロールしています。
分泌が過剰になるとそれが原因となって攻撃的になったり、怒りやすくなります。
もう一方のドーパミンは喜びや意欲をもたらします。
しかし、こちらも増えすぎが原因になって、過食や買い物やアルコールなどの依存症を誘発してしまうことがあります。
この2つの神経伝達物質の分泌量は、ストレスが原因で変わることがあり、その影響力は小さくありません。
例えば、ノルアドレナリンはストレスを感じると放出され、自律神経に働きかけて心拍数を上げ、血液量を増やして活動しやすい状態を作ります。
また、ドーパミンは、ストレスを感じる状況を乗り越えたときの達成感などをもたらします。
そこでセロトニンは、この2つの神経伝達物質の量をコントロールし、気持ちを安定させる働きをしています。
ストレスが過剰になるとセロトニンが不足し、うつ症状が表れてしまうのは、こうした働きが原因となっているのです。
関連記事:うつ病と不眠症のきってもきれない深い関係
睡眠をもたらすメラトニンはセロトニンから生成
セロトニンは、朝、太陽の光を浴びることで分泌され、自律神経に働きかけ、昼間の活動に欠かせない交感神経を活性化させます。
朝の起床から14~15時間経つと、リラックスモードを司る副交感神経が優位になり始め、セロトニンは働きを弱めます。
代わりに生成されるのが睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンです。
実はこのメラトニン、セロトニンが材料になって作られているのです。
そのため、セロトニンの量が十分にないとメラトニンも必要量が生成されません。
メラトニンが十分に生成されないと、スムースな睡眠を導いたり、深い眠りを導き、質を上げることができなくなってしまうのです。
関連記事:睡眠ホルモン「メラトニン」の効果と「セロトニン」との関係とは?
セロトニン不足がうつ病や不眠症の原因に
うつ症状と不眠症状は、表裏一体で相互に関係しています。
どちらの症状もセロトニン不足が原因となっているものです。
ストレスが過剰になってセロトニン不足になることで不眠症になって、うつ症状を誘発する場合もあります。
また、セロトニン不足からうつ症状を発し、それが原因となって不眠症に陥ることもまたあり得るのです。
セロトニン不足のときの対処法
セロトニンは食べ物から摂取できない成分の1つです。
不足したときには、その原料となる成分を食物からしっかり摂りいれたり、生成を促す働きを活性化させることが必要です。
セロトニン不足を感じたらトリプトファンを摂る
セロトニンの原料は、アミノ酸の1種であるトリプトファンです。
肉や魚、大豆や乳製品、緑黄色野菜など、さまざまな食材からに含まれています。
特に多いのは、肉や魚などの動物性タンパク質。
3食バランスよく食べて、1日の間にまんべんなく摂取できるのが理想的です。
また、セロトニンはトリプトファンだけでなく、ビタミンB6なども原料となりますし、トリプトファンを脳内に運ぶのには糖質(炭水化物)が欠かせません。
こうした栄養素をしっかり含んで時間がないときでも食べやすいのがバナナです。
朝食を食べている時間がないという方でも、バナナ1本を朝食に摂る習慣をつけるのはおすすめです。
体内時計をリセットしてセロトニン不足を解消
睡眠の質を上げることを目的にするなら、体内時計をリセットしてセロトニン不足を解消するのがおすすめです。
朝、しっかり朝日を浴びてないせいで身体が活動モードにならず、自律神経のバランスが崩れていることでセロトニン不足になっているかもしれないからです。
また、体内時計はすべての人が24時間ぴったりなわけではありません。
人それぞれ少しずつずれがありますが、朝、太陽の光を浴びて朝食をとることで、毎朝、体内時計をリセットすることができるのです。
生活習慣を整えることがセロトニン不足を解消する決め手となります。
関連記事:太陽光がカギを握る!今夜の質の良い睡眠
セロトニン不足の原因とその症状まとめ
睡眠の質を上げるにはさまざまな体内の成分や活動を整える必要があります。
その1つが神経伝達物質の一種であるセロトニンです。
眠りを導くだけでなく、ストレスへの抵抗力などにも関わり、現在急増しているうつ症状を解消するカギも握っています。
- セロトニンは睡眠に欠かせない神経伝達物質の1つ
- セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンとともに昼間の活動モードを支えている
- ノルアドレナリンやドーパミンの量をコントロールし、気持ちを安定させる
- ストレスが過剰になるとノルアドレナリンやドーパミンが過剰に分泌されるため、コントロールするためのセロトニンも不足ししがちになる
- 朝、朝日を浴びるとセロトニンが生成され、活動モードが活性化する
- セロトニンは夜、睡眠を導く睡眠ホルモン、メラトニンの原料となる
- セロトニンは食物から摂取できず、体内で生成される
- セロトニンの原料はアミノ酸の1種、トリプトファン
- セロトニンを脳内に届けるには糖質が必要
- バナナはトリプトファンや糖質も含むのでセロトニン不足解消にぴったりのお手軽食材