何かあるとつい犠牲にしがちな睡眠。
でもつらいのは朝だけだし、毎日なんとか職場や学校に行っているから問題ないのでは?と思っている方、多いようです。
確かに、今日だけのアクシデント的な短時間睡眠ならリカバーも難しくありませんし、危険もさほどありません。
しかし、短時間睡眠を繰り返すのは、問題ないのでしょうか?
今回は、短時間睡眠を繰り返すことで生まれる、危険性についてご紹介します。
繰り返すことで危険度アップ!短時間睡眠
適切な睡眠時間は人それぞれですが、短時間睡眠でも支障がないと考えられるショートスリーパーの人たちは、日本人全体で5~8%います。
そのほかの人たちは、6時間以上の睡眠を必要としていて、適切と考えられる睡眠時間の平均は7~8時間といわれています。
しかし、ショートスリーパーではない人でも、普段の睡眠時間は6時間を切っているという人は少なくありません。
そのため、もともとショートスリーパーではない人が短時間睡眠を繰り返すと、慢性的な睡眠不足に陥ります。
それは、思った以上に危険性が高いのです。
繰り返す短時間睡眠とその結果は?
適切な睡眠時間がとれているかどうかは、毎朝スッキリ目が覚めて、ランチ後の早めの午後に来る眠気以外、昼間眠気を感じることがないかどうかでわかります。
つまり昼間は何とか仕事をしていても、毎朝、睡魔との戦いが繰り広げられているという方は、知らず知らずのうちに慢性の睡眠不足となっているのです。
実は、この不足分は負債となって毎日毎日溜まっています。
それが2017年に流行語大賞のベストテンにもランクインした睡眠負債という言葉の意味でもあります。
負債は、返さなければ溜まるばかり。
睡眠負債が増えることは、過労死などにもつながり、健康面での危険性がどんどん高まることとイコールなのです。
繰り返す短時間睡眠の危険性
短時間睡眠を繰り返すことで睡眠負債をたくさん抱えると、健康面での危険度が高まります。
例えば、2003年にペンシルベニア大学とワシントン大学が行った睡眠実験があります。
睡眠実験の内容としては、
対象:普段7~8時間の睡眠をとる健康的な男女
実験内容:8時間睡眠を2週間続けるグループと6時間睡眠を2週間続けるグループに分け、被験者の身体的・精神的パフォーマンスをテスト
この結果、8時間睡眠をとっていたグループは認知機能や注意力、運動能力などに低下は見られませんでした。
ところが、6時間睡眠のグループは、日を重ねるごとにさまざまなパフォーマンスが低下。
2週間後には、2日連続で徹夜したときと変わらないデータが出たのです。
この実験結果の怖いところは、これだけではありません。
被験者が自分のパフォーマンスが下がっていることを自覚できていなかったのです。
実際の生活でも、短時間睡眠を繰り返すことで負った睡眠負債によって仕事のパフォーマンスが下がります。
また、残業を重ねることで、結果として睡眠時間を削るという負のスパイラルに陥っている状況は数多くあります。
毎朝、睡魔と戦っているようでは、仕事のパフォーマンスが下がっていることは確実です。
逆に、睡眠をしっかりとってパフォーマンスを上げ、残業を晴らすことを考えた方が建設的かもしれません。
自分の働き方や睡眠のとり方を見直してみることをおすすめします。
繰り返す短時間睡眠で陥る「うつ」
短時間睡眠を繰り返すことで抱えた睡眠負債が引き起こす、心身の健康リスクの1つがうつです。
睡眠負債が溜まっている状態では、疲れも蓄積され、体調不良に陥っています。
動悸などが起こることも多く、こういう状態のときには上記の実験からもわかるように認知力や判断力、集中力が落ちています。
そんな状態でアクシデントが起こると精神的なストレスがかかり、メンタルのバランスが保てなくなります。
こうした積み重ねがうつを招きます。
うつは、憂鬱な気分が2週間以上続き、何をやっても気が晴れることがない状態です。
環境や状況を変えなければ、悪化することはあっても良くなることはありません。
精神的に追い詰められれば、自殺など過労死の引き金となることもあります。
関連記事:睡眠不足はうつ病の原因になる?
短時間睡眠も頭痛の原因の1つに
短時間睡眠を繰り返すと、睡眠負債が重なり、身体の不調もさまざまな症状となって表れます。
頭痛もその1つ。
頭痛は睡眠と関係が深く、増大した睡眠負債は偏頭痛の要因の1つと言われています。
睡眠不足で起こる頭痛の症状は、ズキンズキンと脈打つように痛むタイプ。
睡眠によって処理するべき活性酸素が眠れないことで増えてしまうことがこの頭痛の原因です。
脳が活性酸素を取り込まないように血流量を減らすことで頭痛が起こってしまうのです。
また、短時間睡眠によって乱れた自律神経の働きも頭痛の原因になります。
短時間睡眠を繰り返すと交感神経が優位な状態が続いてしまい、脳の神経伝達物質のコントロールが乱れ、脳の疲労を招きます。
その過程で血流量のコントロール障害が起き、頭痛が発生するのです。
頭痛は、頭痛だけにとどまらず、さまざまな症状を伴う場合が多くあります。
日常生活に支障をきたす場合も多いですので、頭痛が起きるほどの症状が出る前に自分の睡眠のとり方を見直すことをおすすめします。
過労死につながる短時間睡眠の危険性
短時間睡眠が重なる原因として、残業の多さや休日出勤などが考えられます。
これは、過労死につながる危険性もある、重大な問題です。
過労死の直接の原因として労災で認められているのは、心臓や脳の疾患です。
脳の疾患
- 脳内出血(脳出血)
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 高血圧性脳症
心臓の疾患
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心停止(心臓性突然死を含む)
- 解離性大動脈瘤
一般的に生活習慣病とされるような病気も含まれ、中高年層に多く見られますが、過労死は年齢に関係なく発生しています。
むしろ若い人ほど無理をする危険性が高く、過労死に至るケースが多いように思えます。
過労死の原因は、長時間労働や精神的なストレスを伴う労働ですが、その際に基準となるのが睡眠時間です。
過労死として労災認定する際、過剰な労働の判断の基準は、妥当な睡眠時間は7ないし8時間として、その日の疲労をその日の睡眠で回復できる状態にあったかどうかとされています。
つまり睡眠時間の長さやその質が保てないことが過労死につながることは国も認めているのです。
過剰な労働の結果、短時間睡眠を繰り返すことで心臓や脳に重大な疾患が生じたり、うつ病などで精神的に追い込まれて自殺し、過労死に至るケースが増えているのです。
肥満も短時間睡眠のリスクの1つ
短時間睡眠を重ねることで睡眠負債を負うと太りやすくなります。
その理由がホルモンバランスの乱れです。
食欲は、レプチンという抑制するホルモンと、グレリンという増進させるホルモンのバランスでコントロールされています。
しかし、寝不足になるとレプチンが減り、グレリンが増えてしまいます。
結果として、食事の量や間食の回数が増えてしまいがちになるのです。
また、睡眠負債が溜まると、糖分を脂肪に変えるインスリンが血液中に残りやすくなり、体内にある糖分がどんどん脂肪に作り替えられてしまいます。
これでは、食事制限などまったくの無駄です。
インスリンによって糖が脂肪に変えられるということは、糖尿病にリスクも高まるということにもつながります。
さらに短時間睡眠に寄って寝不足が重なると、自律神経のバランスも乱します。
そのため基礎代謝が下がり、脂肪燃焼が減ります。
短時間睡眠の結果、身体はどんどん肥満し、健康リスクも高まっていくのです。
関連記事:睡眠不足って太るの?
関連記事:ダイエット効果を高める睡眠方法とは?
繰り返す短時間睡眠は危険なサイレントキラー
短時間睡眠を繰り返すことで睡眠負債は増大し、負債が増えることで健康リスクは高まります。
やっかいなのは、その危険性を自覚できないケースが多いこと。
パフォーマンスの質が落ちてもわからず、非効率的に働き、生活の質まで影響が出ているのです。
また、生活習慣病のみならず、認知症の発症率を高めるなど、将来にわたって健康リスクが増大していくのです。
短時間睡眠を繰り返すことは、体内にサイレントキラーを着々と育てていることにもなるのです。
こまめな返済で危険にさよなら
短時間睡眠を繰り返して睡眠負債が溜まってしまった場合、こまめに負債を返済することが健康リスクを減らし、身体を危険から守ることにつながります。
平日は、昼休みに20分程度の昼寝をしたり、残業が続くときは睡眠の質を上げる工夫をするなど、少しでも負債を増やさない、こまめに返済するよう気をつけましょう。
繰り返す短時間睡眠の危険性まとめ
短時間睡眠を繰り返すことで健康面での危険性が高まることがわかりました。
しかも頭痛など日常的な症状から、過労死の原因になるなど、見過ごせない状況にもつながります。
短時間睡眠を繰り返すことで生じる危険について、まとめておきましょう。
- 日本人の80~90%の人が6時間以上の睡眠を必要としている
- 毎日、睡眠時間が1~2時間足りないと2週間後には2日徹夜したのと同じほどパフォーマンスが落ちる
- 睡眠不足が重なり、パフォーマンスが落ちても、自分自身が自覚することは少ない
- 短時間睡眠を繰り返し、睡眠不足になるとうつになる場合がある
- 睡眠不足は、偏頭痛の原因にもなる
- 偏頭痛は、睡眠不足によって血流量が乱れることで起こる
- 過労死の原因には脳と心臓の疾患がある
- 過労死はその日の疲れをその日のうちに回復できる睡眠時間が確保できるかどうかも判断基準になっている
- 残業による睡眠不足からうつを発症し、精神的に追い込まれて自殺した場合も過労死に認定されている
- 睡眠不足は、ホルモンバランスを乱し、肥満の原因にもなる
- 睡眠不足によって乱れたホルモンバランスが原因で、糖尿病を引き起こすこともある
- 睡眠負債は、昼寝をしたリ、休日に上手に仮眠をとることで解消できる。